「健診結果は宅配便で送ってはいけない」——人事担当者なら一度は耳にしたことがあるルールではないでしょうか。なぜ宅配便ではダメなのか、社内便ならよいのか、メールでPDFを送るのはどうなのか。曖昧なまま運用している会社も少なくありません。

健診結果を紙で送る場合は、単に「安く送れる方法」を選べばよいわけではなく、信書を送ることができる方法を選ぶ必要があります。違反すると罰則の対象になる可能性もあります。人事担当者として正しく理解しておきたいポイントをまとめました。


そもそも「信書」とは

信書(しんしょ)とは、郵便法・信書便法で次のように定義されています。

特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、または事実を通知する文書

少し難しい言葉ですが、かみ砕くと「個別に宛てられた、意思や事実を伝える文書」です。

身近な例でいうと、以下のようなものが信書にあたります。

  • 採用内定通知書
  • 診断書・健診結果通知
  • 請求書・領収書
  • 契約書の原本

一方、カタログ・パンフレット・チラシ類は、通常、信書にはあたりません。「特定の誰かへの通知」ではなく、不特定多数に配るものだからです。


なぜ健診結果が信書になるのか

健診結果通知は、次の3つの条件を満たします。

条件 健診結果への当てはめ
特定の差出人がいる 健診機関または会社(産業保健スタッフ等)
特定の受取人がいる 従業員個人(氏名・住所などで特定される)
事実を通知する文書である 血圧・血糖値などの検査値や判定区分を通知する

この3つが揃うため、紙の健診結果通知は法律上「信書」として扱う必要があります。


信書の送り方ルール

信書を送れるのは、法律で認められた事業者・サービスに限られます。日本郵便のサービスであっても、すべてのサービスで信書を送れるわけではない点に注意が必要です。

健診結果の郵送と信書のイメージ

使えるサービス

日本郵便の郵便サービス・特定封筒

サービス名 特徴 料金目安
定形郵便 50g以内、最大23.5×12×厚さ1cm(最小14×9cm) 110円(一律)
定形外郵便 規格内1kgまで、規格外4kgまで 140円〜
レターパックプラス A4・4kgまで、対面手渡し。ポスト投函・窓口差出し・集荷に対応 600円
レターパックライト A4・4kgまで、郵便受け投函。ポスト投函・窓口差出しに対応 430円
スマートレター A5・1kgまで、全国一律。ポスト投函・窓口差出しに対応 210円
書留・速達・特定記録 郵便物等に追加できるオプション +料金

健診結果の封書は、多くの場合、定形郵便に収まります。追跡が必要な場合は、郵便局の窓口で「特定記録郵便」を付けると、差出しの記録が残り、配達状況を追跡できます。ただし、特定記録は原則として郵便受けへの投函であり、対面受領や受領印が残るサービスではありません。対面での受け渡しや補償を重視する場合は、書留の利用も検討します。

なお、ゆうパック・ゆうメール・ゆうパケット・クリックポストは信書を送れません。日本郵便のサービスであっても、すべてが信書に対応しているわけではない点を覚えておきましょう。

特定信書便事業者(民間)

総務省の許可を受けた民間事業者も、一定の条件のもとで信書を送達できます。代表例として佐川急便の「飛脚特定信書便」があります。飛脚特定信書便1号は、3辺合計73cm超〜160cm以内、または4kg超〜30kg以内の信書便物が対象です。3号は3辺合計160cm以内・30kg以内の信書便物が対象で、特定信書便3号役務は一般に運賃料金が800円を超える高付加価値サービスとして位置づけられます。いずれも利用条件や料金は事業者・契約内容により異なるため、利用前の確認が必要です。健診結果のような薄い封書1通を従業員自宅へ送る用途では、サイズ要件・コスト面から実務上は日本郵便を使うのが一般的です。

使えないサービス

サービス 理由
宅急便・飛脚宅配便などの通常の宅配便 通常の荷物配送サービスでは信書を送れないため
ネコポス・ゆうパケット・クリックポスト等の小型荷物便 荷物扱いのサービスであり、信書送達には対応していないため
バイク便・一般の荷物配送 信書便事業者として認められたサービスでない場合、信書を送れないため

よくある誤解として、「追跡できる宅配便なら書留の代わりになる」と思われがちです。しかし、書留は日本郵便の郵便サービスに付けるオプションです。宅配便で「書留のように追跡できる」機能があっても、信書を送れることにはなりません。また、佐川急便で信書を送れるのは、通常の飛脚宅配便ではなく、所定の条件を満たした「飛脚特定信書便」を利用する場合に限られます。


もし違反したらどうなるか

郵便法第76条では、無許可で信書を送達した者に対して「3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金」が定められています。2025年6月1日施行の改正刑法および関係法律整備法により、従来の「懲役」は「拘禁刑」に変更されています。

ここで注意したいのは、罰則の対象は配送業者だけではないという点です。郵便法第4条第4項では、信書の送達を郵便または信書便事業者以外に委託してはならないとされています。つまり、違法な方法で信書の送達を依頼した発送主側も、罰則の対象となり得ます。「配送業者が受けてくれたから大丈夫」とは限らない、という点に注意が必要です。

さらに、刑事罰だけでなく、個人情報保護の観点からも注意が必要です。健診結果は個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。会社が個人データとして管理している健診結果について、誤配・誤交付・紛失等により漏えい等が発生した場合、1名分であっても個人情報保護委員会への報告および本人通知が必要となる可能性があります。

誤った方法で送ることは、信書規制上のリスクと個人情報インシデントのリスクを同時に抱えることになります。


実務での Before / After

Before:よくある誤った運用

  1. 健診機関から会社に結果用紙が一括納品される
  2. 人事担当者が個別に封筒へ封入する
  3. 「送料が安いから」と宅配便やネコポス等の小型荷物便で発送する ← NG

After:正しい運用

  1. 健診機関から会社に結果用紙が一括納品される
  2. 人事担当者が個別に封筒へ封入する
  3. 定形郵便・定形外郵便・レターパック・スマートレターなど、信書を送れる方法で発送する ← OK

コスト面のヒント:定形郵便(50g以内)は、2024年10月の料金改定により一律110円となりました。追跡が必要なら、郵便局窓口で「特定記録」を付けると、差出しの記録と配達状況の追跡ができます。従業員数が多い場合は、健診機関に直接郵送を委託できるか確認すると、社内の封入・発送作業を減らせる場合があります。


よくある質問

Q. 会社の住所宛に送る場合も信書扱いが必要ですか?
はい。宛先が会社であっても、受取人として従業員個人が特定されている場合は、信書にあたる可能性が高いです。たとえば「〇〇株式会社 山田太郎 様」のように、従業員個人に向けて健診結果を通知する文書であれば、信書として扱う必要があります。
Q. 法人宛(「〇〇株式会社 御中」)にまとめて送る場合も信書扱いが必要ですか?
はい。総務省の信書ガイドラインQ&A集では、受取人が自然人(個人)か法人かは問わないと整理されています。差出人が「意思の表示又は事実の通知を受ける者」として特定の法人を定めている以上、「〇〇株式会社 御中」と記載されていても、その会社に対する事実の通知をしていることになるため、信書に該当します。

具体的には、次のようなケースはいずれも信書扱いが必要です。

  • 健診機関から会社あてに、従業員の健診結果を一括で送付する場合
  • 会社から、外部の産業医・健康保険組合・健診後の事後措置委託先などに、従業員の健診結果(個別データ)をまとめて送付する場合
  • 会社が、再検査機関や精密検査の医療機関に、特定の従業員の検査結果を引き継ぐために送付する場合

これらは「特定の検査結果を、特定の受取人に通知する文書」であるため、宛先が法人名であっても信書扱いが必要です。コスト面で宅配便を選びたくなる場面ですが、法人間であっても信書規制の対象外にはならない点に注意が必要です。

Q. PDFをメールで送るのは?
メールやオンラインシステムを通じたデジタルデータの送信は、紙などの有体物である「文書」の送達ではないため、信書規制の対象外と整理されています。そのため、健診結果をマイページで閲覧させる仕組みや、暗号化PDFのメール送付は、信書規制上の問題とは別に整理されます。ただし、健診結果は要配慮個人情報であるため、本人確認、宛先確認、アクセス制限、通信の暗号化、添付ファイルの保護など、個人情報保護上の安全管理措置は別途必要です。
Q. 社内便で本社から支社の従業員に転送するのは?
同一法人内で、自社スタッフが社内便として運ぶ場合は、外部の信書送達事業者への委託にはあたりません。ただし、グループ会社間など別法人をまたぐ場合や、宅配業者・バイク便などの外部業者を使う場合は注意が必要です。そのような場合は、日本郵便の郵便サービスまたは信書便事業者を利用する前提で整理した方が安全です。

まとめ

確認ポイント OK 避けたい運用・NG
配送手段 定形郵便・定形外郵便・レターパック・スマートレターなど、信書を送れる方法 宅配便・小型荷物便での発送
デジタル送付 本人確認されたマイページ閲覧、暗号化・アクセス制限された送付 平文メール、宛先確認なしの一斉送信、パスワードなしPDF添付など
社内転送 同一法人内で、自社スタッフが社内便として運ぶ方法 別法人間や外部業者を使った信書非対応の配送
追跡が必要な場合 特定記録・書留・レターパックなど、目的に応じた方法を選ぶ 「宅配便で追跡できるから大丈夫」と判断すること

健診結果の郵送は、要配慮個人情報を扱う重要な業務です。信書規制の本質は、「特定の個人に向けた通知を、責任ある方法で届ける」という考え方にあります。

制度の背景を理解しておくと、イレギュラーなケースに直面したときも判断しやすくなります。今年度の健診対応の前に、ぜひ社内フローを見直してみてください。

本記事をご覧の皆様へ ― 法改正等による情報更新のお願い

本記事は執筆時点の法令・公的ガイドライン・郵便料金等に基づいて作成しています。郵便法・信書便法、刑法、個人情報保護法、労働安全衛生法などの関連法令や、総務省の「信書のガイドライン」、日本郵便のサービス内容・料金は、改正・変更される場合があります。たとえば2024年10月の郵便料金改定や、2025年6月施行の改正刑法(懲役・禁錮を一本化した「拘禁刑」の創設)のように、実務に直結する変更は今後も起こり得ます。

そのため、実際の運用にあたっては、必ず最新の法令・公式ガイドライン・各事業者の最新サービス内容をご確認いただき、判断に迷うケースでは社内法務、顧問弁護士、社会保険労務士、産業医等の専門家にご相談ください。本記事の内容は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別事案に対する法的助言を行うものではありません。